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Gig Report
 
ATARIS - 米国首都からの1stレポ -
9:30 Club - Washington DC - 2003/04/28

- PREVIEW -
 
アメリカ・ワシントンDCに単身飛んだしげやんが、アタリスのライヴレポートを送ってくれました。

・・・そしていきなりセットリストつき!
 
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- GIG REPORT -
 
The Atarisのことはメジャー・デビュー前から気になっていた。2年前、スイスでLess Than Jakeを観た際、彼らは前座として出演していた(結局観れなかった)が、それ以降どういうわけかバンド名はずっと頭の中に残っていたのである。最近になりメジャー・デビュー作「So Long, Astoria」を発売したが、これがまた直球一本勝負なアメリカン・ロックで、曲は良いわ音は爽快かつ重圧で気持ち良いわで、視聴した時点で気に入り即座アルバムを購入した位だった。こんなこともあり、今回のワシントンDC(以下DC)ライブは本当に楽しみにしていたわけである。

唐突に話が変わるが、在米日本大使館が発行した「安全生活情報(ワシントン圏に暮らす邦人のための便利帳)」という小冊子が手元にある。これによると、アメリカ全土における犯罪発生総数は人口10万人あたり4,124件(2000年)である。単純化すると、100人にあたり犯罪が4件起こるということだ。しかし、DC(人口57万)の犯罪発生率はその全米平均をはるかに超えており、総数は全米平均の2倍弱(人口10万人あたり7,276件)、殺人は約8倍(人口10万人あたり41.8件)の高率で発生している。もっともDC内の犯罪多発地域は決まっており、北西部は安全な地域である一方、他の地域はスラム化が進み、より南に、より東に行くほど治安が悪くなるという分極化が進んでいる。

前置きが長くなったが、今回のライヴは、DC内でも治安があまり良くない地域にある会場「9:30 Club」で観た。ガイドブック「地球の○き方」には「あまり周囲の環境がよくないので、タクシーでアクセスするように」と書いているが、「あまり」というのは読者に対して誤解を招きかねないほどの場所だ。これから行く人がいたら、間違っても地下鉄なんか使ってはいけない。選択肢は車しかない。駐車場に車を入れてから会場に入るまでも緊張せざるをえないような場所だからだ(とは言っても徒歩で1分なのだが)。DCを代表するライブハウスでありながら、派手なネオンもなく、何の変哲もない会場なのは、そのような地理的条件が関係しているのかもしれない。窓口で当日券(10ドル)を入手し、フロアへ。1階はオールスタンディング、2階はスタンディング+バーカウンター+座席という構造で、キャパは約1,300人。入場したのは前座終了後の休憩時間中で、皆は酒を飲んだり大声でしゃべってたりしてるが、フロアには動くスペースも十分あり、入りは8割といったところか。

照明が暗転するとかなりデカい歓声。BGMで流れるThe Whoの"Won't Get Fooled Again"の感想に合わせてストロボが光り、それに合わせてメンバー登場。その演出がけっこうカッコ良い…と思ったら、途中でBGMがフェードアウトし一瞬ながら間が出来たのでちょっと拍子抜けしたが、その後に出てきた音はレベルが非常に高いものだった。

バンドはボーカル&ギターのフロントマンにギタリスト、ベーシスト、ドラマーの4人編成だが、下積み生活が長かったためなのか、バンド・アンサンブルは完璧なほどにまとまっている。各自のテクニックがあるのは当たり前で、だからといって見せびらかす要素は殆どない。ギター・ソロはあまりなく、時々アイアン・メイデン(Iron Maiden)を彷彿させるようなツイン・ギターもあったものの、あくまでも歌のメロディーを盛り上げる一要素でしかない。そういえばPAもボーカル中心にミックスされていて、キャッチーなメロディが聞こえやすいようになっている。選曲も緩急が上手く配置され、盛り上げるところでは観客を煽り歓声が高まる、という、良いライヴのお手本のようなセットだ。

ルックスはお世辞にも良いとは言えないし、若くもない。フロントマンのルックスは決して悪くはないんだが、整髪料で固めていたブロンド・ヘアがライヴ後半になって緩んでくるとペシャンコに潰れボリュームが全くなくなり、まるでアルシンド(古い例えだ)。フロントマンですらそんな調子だから、残りの3人のルックスは印象にも残らないくらいに標準的、悪く言えば華がない。しかし、そんなことがどうでもよくなる位にこのバンドの曲は良い。今のアメリカン・ロックのおいしいところだけを各方面から頂戴しているようすら思える。例えば、声の甘さはグーグー・ドールズ(GooGoo Dolls)、メロディの良さはグリーン・デイ(Green Day)、キャッチーさはオフスプリング(Offspring)とか。 このバンドを一言で表すとしたら「清い」だろうか。上に書いた音の例えだけを読むと、まるでThe Atarisの音が売れ線まっしぐらのように思うかもしれない。しかし、彼らの場合、そうではなく、影響を受けたアーティストたちを素直に尊敬し敬意を払った結果ゆえに良いところを拝借した、という印象を受けるのだ。そういえばシングルカットされた"In This Diary"ではブライアン・アダムス(Bryan Adams)の"Summer of 69"から歌詞を拝借したり、アルバムではドン・ヘンリー(Don Henley)のカバーをしていたり、80年代ロックからの影響を隠すことなく堂々と公表している。繰り返し感謝の気持ちをMCで語った後、観客をステージに乗せていきなりギターを弾かせる。それにしては上手すぎるんじゃない?と思っていたが、後で公式サイトを見たところ、全てのショーで公募しているようだ。さらに、いかにファンを大事にしたいか、という文章が長々と綴っている。うん、やはり清いのだ。

すっかりその世界に引き込まれてる中、本編が終わりアンコールへ進んだが、そこで演奏された"My Reply"が最も印象的な曲となった。MCによると、末期癌で闘病中のファンから手紙をもらい、その返事を曲で書いたとのことで、レスポールの弾き語りで演奏するフロントマン。ギターのやや弱い8分音符ピッキングとともに語りかけるように歌い始め、曲の展開に合わせてそれがシャウトに変わり、ギターのストロークも激しくなる。ダイナミックなことこの上ない…。詳しい歌詞まで聞いてはいなかったが、そのサウンドだけも思わず涙が出そうになってしまう。

ライヴから1ヶ月近くが経った今となっては詳しいことは思い出せないが、ライヴが終わった後に相当な充実感があったことは確かである。セットリストをもらう際PAスタッフと言葉を交わしたが、いわく「日本でのショーが楽しみだよ。また会おう」だって。


 
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Last updated: 2003/06/01