Burps Online

Gig Report
BB KING MUSIC FESTIVAL 2003 - JBですら若造 -
Wolf Trap Filene Cente - Vienna, VA - 9/2/2003

- PREVIEW -
 
いわゆる「ロック」がアメリカのラジオでかかる場合、流すラジオ局は大別して以下の3種に分けられる。(1) ポップ寄りロック、(2) ヘヴィー・ロック~オルタナ系、(3) クラシック・ロック(60~80年代ロック)。そして、それぞれにオーバーラップするアーティストはあまりない。具体的な例を挙げると、ジョン・メイヤーは(1)でしかかからないし、レイジはすでに「クラシック」の領域に達しているとも思うが(2)だけだし、フリートウッド・マックは新作を出しても(1)ではかからない。このように、ラジオ局には無言のジャンル分けがあり、その枠に収まらないアーティストはかけられることが極めて少ないのだ。

ジェフ・ベック(以下JB)の曲は、まともにラジオで聴いた試しがない。インスト曲では (1) で扱わないし、保守的な(3)の柵をはみ出てしまう。おっと、「まともに」と書いたのには理由がある。地元のラジオ局(ちなみに(3)に該当)では、JBの"Roy's Toy"が朝の交通情報BGMとして毎日使われているのだ。「355号線は木が倒れて通行止めです。ボルチモア・ワシントン・パークウェイはボルチモア周辺の事故でひどい渋滞です。495号線南方面はいつものようにごった返してます」なんかの情報とともにJBのギターが毎日聴けるのだ。そうすると、意外にもJBのサウンドはサブリミナルに浸透しているのかもしれない。前置きが長くなったが、今回のライヴを見る前まで気になっていたのは「アメリカでのJBファンってどんな人なんだろう。」ということだ。
 
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- GIG REPORT -
 
38ドル(約4500円)のチケットに書いてある開演時間は7:00PM...早すぎる。何てったって「フェスティヴァル」だし、他の前座がいるのでは...と思って事前に会場へ電話して確認した。しかし、そういうことはないらしい。相変わらず道路事情の悪いDCの渋滞と悪戦苦闘しながら会場に着いたのは19:00...JBに間に合わないではないか!


JEFF BECK

しかしこの会場は面白い。DC中心部より約30km離れたところに位置する夏期限定営業の会場だが、なんと国立公園局が管理している全米で唯一のコンサート会場なのだ。ロックにとどまらずクラシックからジャズも扱うなど、どちらかというと大人が楽しむ会場というニュアンスが強いが、そういう観客層 のためか会場内の私物の持込制限はとても緩く、芝生席の人たちは皆クーラー・ボックスを持ち込み、自前で食べ物やアルコールを持ち込んでいる。会場を案内しているのは杓子定規な対応しか出来ないバイトではなく、制服を着た国立公園局レンジャーで、対応もプロフェッショナル。しかし、そんなことをウォッチングしてる場合ではない。案の定、ライヴは始まっていた。駐車場から会場へ向かう途中に"Roy's Toy"のギター音が聴こえ始めたからだ。

(START - 19:00)

会場に小走りで急ぎながらもウォッチング。会場は半野外の劇場形式で、前方に座席、後方に芝生があるのはアメリカの会場にはもうお馴染みのスタイルだが、よーく見ると座席部分は木造で趣がある。うん、さすが国立公園局。後ほど調べたが、会場のキャパは座席・芝生あわせて7,000人とのこと。ステージ向かって左側、座席部やや後方の席(前から約25列目)へと急いだ。

ステージはごくシンプル。ステージ後方に円形のステージ・スクリーンはあるものの、それ以外に大したセットはなく、たった3人しかいないからスカスカにすら見える。で、その3人。事前の報道でウワサには聞いていたが、『Guitar Shop』(1989年)製作時と同じ3人編成...つまりジェフ・ベック(JB)、テリー・ボジオ(Terry Bozzio: dr)、トニー・ハイマス(Tony Hymas: key)である。JBはステージ中心に立ち、クリーム・ホワイトのJBモデル・ストラトと背後にマーシャル・アンプを抱えている。向かって左側にはボジオのセットがあるが、これがいつもの如くスゴいセットで、ボジオ様の前には料理人の調理具よろしくシンバルがジャンジャラぶら下がり、キメではそれを叩きまくる。ツー・バスには留まらず、向かって右側、横向きにもう1個バスドラムまである。黒のズボンに上半身は同じく黒の網シャツ、というとんでもない格好だが、この人にはそれが似合うのだった。トニー・ハイマスは本当~~に地味だし、突進している二人の前では可哀相なぐらいに存在感と音圧が薄い。ただでさえベースレスなのに、この人の繊細すぎるプレイでは音がスカスカになってしまうのだが、かれこれ25年ほどの付き合いなんだ。ベックの弱みでも握ってるのか?!エリック・クラプトンに対してのアンディ・フェアウェザー・ロウみたい存在なのか?!さて、以下は曲ごとに解説していく。


Roy's Toy
だから、この曲を聴くと交通情報を思い出すんです。会場に向かう途中で音が聞こえたもんだから、聞こえてくるのがカーラジオからなのか会場なのか一瞬迷ってしまった。

Psycho Sam
原曲とは違い、ボジオ様がビシバシ切れ、とんでもない技を次々と繰り広げるものだから、原曲のテクノ的な雰囲気とは異なり、やたらとハードでドロ臭い印象すら受けた。

Big Block
こ、こ、これは嬉しい!『Guitar Shop』収録の曲そのままでこの曲をまた聴けるとは本当に感無量。なんて言ってながらハイマスのシンセ音はかなり薄く、ちょっと拍子抜け。JBはけっこうミストーンとかハーモニクスの鳴らし損ないが目立ち、これまで見てきた来日公演+もろもろの非合法映像と比べて、決して絶好調とは言いがたい。しかし、ボジオボジオボジオ!シンバル一つ叩くにしたって全精魂を込め、まるで親の仇を取るかのような気迫を失わず、なおかつ男前なのは...。一音一音カッコ良すぎ、スゴすぎ。

Freeway Jam
高速のシャッフルを叩き始めるボジオ様。しかも、全ての3連符をバスドラムで踏み、スネアのロールと同じくらい強弱をつけてニュアンスを出しているから、もう笑うしかない。あ、曲の中でずーっとそれを続けてるんですよ。念のため。このシャッフルは...JBファンにとっては"Freeway Jam"と簡単に予測出来るのだが、メロディに入っても観客の反応は今一つ。あの"Freeway Jam"ですぞ。ベースがいないせいもあり、音がスカスカした印象をどうしても持ってしまうが、ボジオ様がそれを見事に埋めている。

Brush With The Blues
"Oh, yeah---!"と、隣のJBオタクと思われるアメリカ人オヤジかなり大喜び。シンプルなブルースの曲構成ゆえに、おそらく曲を知らない人でもベックの強弱に応じて拍手をする。ボジオ様もJBを引き立てるべく大人しめ。しかし、音を注意深く聞く、という意味では日本でのライヴの方がはるかに上だ。1小節の中でさえ表情を変えるJB、そんなにゆっくりと聞く音楽じゃないですよ。そんなアメリカ人が最もウケたのはJBが左手だけで音を出し、右手ではアクション...という唯一の芸を披露したときだった。

Scatterbrain
これまたボジオ様の何をどうやってるのかさっぱり分からない超絶イントロから開始するが、9/8拍子だから、「もしかして...」と思ったらまさしく"Scatterbrain"だった。しかし、大名作『Blow By Blow』(1975年)から2曲も披露しているしかし、ボジオ様の手数が多い上に原曲よりもかなり早いテンポ、しかもハイマスの音が薄いゆえか、知らない人が聞いたら単にボジオとベックが早弾きしてる曲、という印象を持ったかもしれない。まあ、実際その通りなんだが。しかし、一番笑えたのはJBがギターを弾くのをやめ両手を上に挙げたとき。しかし、例の高速リフは続いている...何かと思ったら、ボジオ様が無数にセットされたメロディック・タムでリフを弾いてるのでした。ははー、参りました。

Good Bye Pork Pie Hat
JBのメローなギター音が響くと大歓声。「なんだ、みんなJB知ってるじゃん?」というツッコミも入れたくなるが、むしろこの頃からギターが本調子になってきて、ピッキングの強弱によって大爆音からメローな音まで操り始めるJBのオーラが出始めたことがむしろ大きいか。ギターソロで「行くぜ!」というとき、JBは必ずボジオ様の方に視線を送り、それを素早く感じ取るボジオ様がたたみかける...というのが繰り返しあった。曲が終わったら観客の大多数がスタンディング・オベーション。

Nadia
イントロではスライド・バーをつかみ、例のインド音階を弾くが、日本公演同様、そのスライドを無造作に足元に落とす「コトッ」という音まで聞こえてしまう。曲の途中で再びスライド・バーを拾って、これまたギターとは思えないような音階でエスニック。隣のJBオタクは"Nadia, oh yeah---...!"と叫びながらも曲の途中でビールを買いに行ってしまう。なんてこったい。

Savoy
これまた『Guitar Shop』から。原曲は「ヘヴィ・メタル・ロカビリー」ともいえる曲調だが、ボジオ様はひたすら突進、手前のシンバル類を叩きまくっているためか「アヴァンギャルド・ロカビリー」という印象かも。JBがかすんでしまう程ボジオ様はスゴい。

Angel
JBはステージ袖で両手にすべり止めをつけまくり、真っ白になった手をパンパンさせる。そう、野球のピッチャーがブルペンでつけているアレである。まるでイタズラをしてるお子さんのようでかなり微笑ましい。ボジオ様、ハイマスともにバッキングに徹し、どちらかというとまったりとしてしまう曲調ではある。しかし、JBはタダモノではない。スライド・バーでフレットのないところまで弾き、叫ぶような高音は圧巻で、これまた観客一同をシーンとさせる。

Seasons
やばい、全然聞き込んでない新作の曲だ。ギターをかえて6弦1音下げにしてメタリックなリフを弾いてた以外、強い印象はなし。

Where Were You
Seasonsのエンディングからなだれ込むようにこの曲へ。ギターは換えずに、そのまま1音下げのギターを使用。おそらくどの公演でもそうだが、この曲は文句なしで今夜のハイライト。弾き方で強弱をつけるだけでなくボリュームつまみを細かくいじり、アームを自由自在に使いこなし、ギターが泣きまくる。ライヴの進行を無視して大声で自分勝手にしゃべるアメリカ人7千人を一斉に黙らせてしまい、ギター(+キーボード)の音のみが響く。あまりにもシーンとしてしまい、周囲の虫の鳴く音がうるさく聴こえたくらいだ。これにはさすがにスタンディング・オベーション。

You Never Know
ギターを通常チューニングのものへ持ち替える。原曲ではヤン・ハマーがシンセで弾いてるイントロ部を、JBがオクターバーをかけて弾くが、こっちの方が全然カッコいい。原曲でもサイモン・フィリップスのバス・ドラムがドコドコ鳴ってるが、ボジオはそれにさらにターボをかけたような突進具合で、JB様も煽られ相乗効果。

A Day In The Life
イントロはギターだけでバッキングとメロを同時に弾き大歓声。正直なところ、以前東京で見たときの方が表現力は抜き出てたとも思うが、そんなことを知らなければ文句のない名演。

Blue Wind
イントロではコーラスがかかってたギターから入り、それにボジオが合わせる、というレコードとは逆の手順。しかしうまく合わず、顔を見合わせ一拍休んだ後ボジオが合わせていた。ソロはベックとハイマスとの掛け合いだが、ハイマスでは役者不足なのは否めない。しかし、その分、というかそれ以上にボジオ様が突進し、際限ない。イントロのギターリフが繰り返される部分でいよいよボジオ様のソロとなり、これがもうスゴイというか何というか、もう言葉に表現できないような。
メンバー紹介をした後"Thank you"と言いステージ袖へ。しかし、アンコールの拍手が鳴ってる間にベックがステージ袖で手のすべり止めをつけて手をパンパンさせてるのを発見。かなり笑えた。

手を真っ白にしながらステージに再度登場したご一行。JB自ら「自分の長いキャリアの中でも今が最高だと思う、本当にありがとう」と語った後に弾いたのは...何と...

People Get Ready
イントロが鳴り響いた瞬間は思わず涙...。 観客もハンドクラップを加え、まるでゴスペルのようなドラマティックな仕上がりにさらなる涙。その昔見たプロモーションビデオでは曲が転調する部分でJBとロッド・スチュワートが熱い抱擁を交わすのだが、その転調部に来るとそのシーンがオーバーラップし、感動を煽り立てるから、もう涙が止まらない。

My Thing
有終の美は新作から。後方の円形スクリーンにはブリトニー・スピアーズが15歳年取ったような悪女的プラチナ・ブロンド美女が出てくる。これがまたかなりマヌケな踊りを披露しながら、曲にあわせてセリフを叫ぶのだ。後半のギターソロではJBがギターを足の間にはさみ、女性に向けた持ち方で弾くもんだから、まるでベックと女性がセッションしている...もう少し言えば絡み合ってるような、非常にエロティックな光景を連想してしまった。まあ、かなり笑えた。新作の中であまり注目してなかった曲だけど、あの映像を見た後はついついニヤニヤしながら聴いてしまうのだ。


JBとボジオ様に見とれてしまったため、結局、冒頭で書いた質問... アメリカでのJBファン層はどういう人たちなのか... は今ひとつ良く分からなかった。ただ、すでに書いたように、一音一音への集中度は日本のファンの方がはるかに上であることは確かである。というわけで、来日したら行ってあげて下さい。JBも満足すると思います。

(END - 20:20)




B.B. KING

観客層は圧倒的に白人が多い。もっとも黒人は約5%で、日頃通うライヴと比べると、はるかに多い印象を受ける。黒人のアーティストが白人層に挑戦するのは、最近では特にヒップ・ホップ界でよく見られるが、この人は何十年とその戦いを争ってきて、それでここまで観客を獲得しているのだ。さすが。

(START - 20:50)

さてさて、まずはバンド・メンバー一同が登場。ピチっと決めた衣装に身を包んでいるのはホーン4名、サイド・ギター2名、ベース、ドラム、キーボードという大所帯である。各自ソロを回すインストを演奏した後、いよいよBBの登場。

自分がBBを見るのは1996年の東京公演以来だが、さすがにその時と比べて年齢を重ねた印象は隠せない。ステージには椅子が用意され、終始それに座ってプレイ。しかし「77歳、今月で78歳だ」というMCを耳にしては、何も言えない。ちなみに御大の誕生日は1925年9月16日。昭和元年。孫文が亡くなり治安維持法が発効された年だ。ははぁ。

BBはしきりにMCを加え、とにかく語る語る。とはいっても、本人自ら「このミシシッピ訛り、聞き取れないかい?」と言ってたくらいのエボニックス(黒人系英語)で、かなり分かりづらい。もっとも、BBは座りながらもオチャメなアクションを披露したり、ボケ役のトランペット奏者に対して掛け合い漫才みたいなのをやったりで見せ所を絶えず作るので、大勢に影響はない。ゴスペルのライヴのように観客と掛け合いもしたり、お約束の盛り上がりMCを加えたりするが、このMCって30~40年前のライヴ盤でも聞いたことあったぞ...まさに伝統芸能。

長年愛用しているギター"Lucille"から出されるギタートーンはとにかく存在感のある音で、太く暖かい。以前観たときと比べるとフレーズの煌びやかさ、滑らかさが本調子ではなかったとライヴ初盤は思っていたが、少しずつ上り調子となり、終盤に"The Thrill Is Gone"が演奏された頃には当初の印象とはだいぶ異なっていた。さらに、次の語りによって更なる歓声が上がった。

「外国へ行くと...みながワシのことを苗字のように...そう、"king"のように扱ってくれるんだ。でも"king"は誰かって?ギターの"king"は若い人でもいる。それは... Jeff Beck!」

そう、JBの共演タイムだ!まあ、JBが使っていたマーシャルのスピーカー・キャビネットがステージ右手に用意されてあったから、きっと出てくれるとは信じていた。しかし、実際にステージに一緒に立ってるを見るとその喜びは倍増。

JBはシンプルなブルース2曲でセッション。笑えたのが、さすがのJBもBB王様の前では子供も同然で、BBの言うことなすことにニコニコ。1曲で帰ろうとするがBBに引き止められ「もう1曲やってけ!」と命令される。二人のソロの掛け合いもあるが、JBがトチってしまい、悪さがバレてしまった子供のようにいたずらっぽく笑ったり、まあ、この辺は事前に練ってあるんだろうけど、あんなJBの表情を見たのは初めてなので本当に笑えた。

JBとの共演後、BBは1曲披露し、観客のスタンディング・オベーションには立ち上がって応え、ステージ袖に勇退。アンコールはなく、終了時刻は午後10時10分、アメリカのライヴには異例ともいえる短さだった。しかし、これだけの白人観客を相手に、ブルース一本勝負した77歳の男。それだけでスゴイっす。

(END - 22:10)


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Last updated: 9/25/2003