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- April 2004 -
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都内の中〜大型のレコード店の店頭にディスプレイされているのを見るとつい嬉しくなってしまうベン・クウェラーの新譜は、実際に聴いてみるとその嬉しさが倍以上に増幅されるという超傑作。普通、自分がそのアーティストを好きになったきっかけとなった曲やアルバムを超えるような作品にその後出会うことは本当に稀だけれども、そんな稀なケースにこの歳になって出会うとは思ってみなかったなぁ。とにかくこんなに何度も何度も繰り返し聞きたくなるアルバムも珍しい。
ベン・クウェラーは(何度も言っているけど)テキサス州グリーンヴィルという、自分がかつて1年半ほど住んでいたアメリカの街から車で10分ほどの田舎町出身だが、彼のファーストアルバムに収録されていて、なおかつライヴのハイライトともなっている「Commerce, TX」に自分とともに住んでいた日本人の友人Yさんに、最近ひょんなことから連絡が取れるようになった。Yさんはアメリカ人の教授の奥さんで、歳は自分と同じぐらいなんだけど、結構かわいい(笑)。シンガーソングライターでギターも弾くということで自分とウマが合い、パーティーなんかの時にはみんなの前で彼女の作った曲を一緒にプレイしたりもした。すべて日本語の曲なのになぜか彼女の歌詞や歌がオーディエンスに絶賛されていたのが面白かったりしたのが、この数年の間に、北はミシガン、南は中米のホンジュラスまで居を変えたそうで、現在はなんと自分がよく出張で行くところに程近いワシントン州タコマという街に住んでいるのだという。メールで
「こないだ出張に行ったときに会えたじゃん!」と悔しがったりもしたが、この中米からタコマに移り住むときにたまたまテキサスのグリーンヴィルやコマースに寄ったそうだ。で結局「何にも変わってなかった」とのこと。「今、ベン・クウェラーって人が日本でも人気でねぇ。Commerce, TXって歌も出しているんだよ。」とYさんに歌詞を送ったら、「やっぱり街の雰囲気と同じで暗い歌だねぇ。」と言われてしまった。自分的には結構明るめな詩だと思ってたんだけど読む人が読むとそういう解釈もあるんだなぁと思った。
「暗い」という視点からこのアルバムの歌詞を見てみると、確かに出だしの「I Need You Back」からいきなり暗い。一昨年の来日公演でも演奏されていたこの曲だけど、「君は自分のもとを離れてしまったけど、決して永遠じゃない。君を取り戻したい。ここに取り戻したい。自分の痛みと恐れを取り除くために。」という歌詞は、アップテンポな曲調とは裏腹に暗い。後期ビートルズのポール・マッカートニーの曲みたいな「Hospital Bed」も超ノリノリなのに「コレコレこうだったらいいのになぁ〜。あぁ〜。」といった歌詞で、「My Apartment」に至っては「コレコレこうだったらいいなぁとは思うんだけど、でもボクは自分のアパートにいるのが好きなんだ。外の暗闇から逃れられる自分のアパートにずっといるのがいい。」と完全に引きこもりと化していてかなり暗い。確か日本公演のアンコールで弾き語られていた記憶がある「On My Way」も、「日本で習ったカラテで奴を殺してやる。自分は殺し屋になるとは思ってなかったけど、だけど今夜は絶対にやるよ。」と、夢想するにも程があるよお前、と言いたくなるぐらい暗い。
しかしこんな暗い歌詞を、本当に暗い街のライヴハウスかなんかでこんなクソガキがボソボソと歌っていたらどうにも救われないわけで、ニューヨークに出てきてこういう歌詞を歌っているからこそ、多少シニカルにもコミカルにも聞こえるし、同じようなことを考えている人達により広く伝播するようにもなったわけで、こっちとしては単純にいろんな人に受け入れられるようになって良かったなぁ、日本にも来れるようになって良かったなぁと思うわけである。
これが普通のシンガーソングライターみたいに単純にピアノやアコギ、もしくはもっとローファイなムードでもって作られていたら自分の感覚にヒットしないんだろうけど、さすがは元グランジの貴公子だけあって曲調にメリハリがあるのがいい。自分の好みのフィットするのはキングス・オブ・レオンも手掛けたイーサン・ジョーンズがプロデュースしているというのも大きいんだろうけど、ベン自身、家で曲を書いているときはテンション低めなんだけど、外に出てバンドでプレイするとなるときっと途端にアッパーになるんだろう。
今流行のパンクもニューメタルもヒップホップも何にもないし、この人がロックンロールの世界地図を塗り替えるなんて思ってもないし期待もしていないけど、なんか珍しくパーソナルな部分で繋がっているように感じるアーティストなので、アルバムも何度も何度もリピートしたくなってしまうのだろう。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki.Last updated: 04/25/04
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