|
|
 |
 |
- September 2003 -
|
Take Them On Your Own
|
BRMC
|
|
いやー、いいアルバムだこれ。
今回みたいに最初から買う気もないアルバムをレコードショップで試聴する時って、買うかどうかの基準というのはほとんどがその3曲目にあって、1曲目、2曲目はテンションが高くて、すごくいいなぁ、と思うものでも、3曲目でちょっと手抜きになると絶対に買わない。そういうのって大抵その後の曲も期待はずれのケースが多いから。だけれどもこのBlack Rebel Motorcycle Club(以下BRMC)のアルバムは3曲目の「We're All In Love」も全2曲に違わずにハイパーで、それを聞いた瞬間、買おうとすでに決めていたMooney Suzukiのアルバムと一緒にレジに持っていってましたわ。(おまけに輸入盤が安かった。) 思えばHivesもそんな風にして最初のアルバムを手にしたんだよなぁ。
セルフタイトルの前作に較べて明らかに曲のBPMが上がり、「Whatever Happened To My Rock'N'Roll」みたいなハードロッキンな曲が増えたってことが単純にヒットだったとも言える。自分のような感覚の人が多いのかどうか知らないけれど、HMVのアルバムチャートの上位にランクされているぐらいだから、BRMCのこの新譜はきっとかなり売れているんだろう。
サンフランシスコをベースにして活動していたアメリカ出身2/3+イギリス出身1/3の彼らって、確か最初にイギリスのメディアでまず火が着いて、それが日本のメディアにもコピー&ペーストで飛び火して、アルバム1枚しか出していないにも拘らず、フジロック'02のレッドマーキーの初日のトリという形で来日することになったんじゃなかったかな。自分もそのライヴを観たけど、なんかぼやーーっとしてイマイチだなぁって感じで、途中でプロディジーとジョージ・クリントンを観に行ったんだっけ。
話はすごく脱線するけど、イギリスのメディア≒NMEって、ニューカマーの扱いとその後のフォローに関するやり口は揶揄されることが多いけど、それこそビートルズがデビューした頃からすでに色々なロックバンドをサポートしていて、当時の若手バンドを集めてフェス形式のライヴを主催・後援したり、ストーンズの「ロックンロール・サーカス」を実現させてきたその古からの実績を見てみると、自分は基本的にそんなに嫌いじゃない。日本やアメリカの同様のメディアとの太いパイプも持っているようだし、ビジネスとしてもすごいなぁと思うことも多いし、アメリカやオーストラリアなどからひょっこりと優れたバンドを見っけてくるその触覚もすごいなぁと思ったりする。そのくせアメリカのローリングストーン誌みたいに雑誌の体裁も洗練されることなく、まるでミニコミ誌みたいな安っぽい作りをしているところも好感を持てたりする。
いや、自分は基本的に雑誌作りのことなんてさっぱり分からないのでこれ以上突っ込んだ憶測でモノを書くとボロが出ると思うんだけど、いずれにせよこのBRMCは、アメリカでデビューしたけど全然パっとしなかったのに、イギリスで2年前にシングルが発売されてから、NME誌含めたイギリスのメディアによってそれが取り上げたられたことがトリガーになってここまで日本でも売れるようになったのには違いないと思う。こうやって取り上げられたバンドが次々と日本のメディアと日本のリスナーの嗜好にマッチするというのも非常に面白い傾向だ。NMEのフィシャルサイトを見れば、そのニュースコーナーに出てくるバンドで日本人が誰も知らないようなバンドに関する記事が載っていることって稀だもの。
このBRMCに関して特に思うのは、1曲目の「Stop」も2曲目の「Six Barrel Shotgun」も、何てことないベースラインに、何てことないギターカッティングが乗って、その後ろに何てことない普通の8ビートのドラムが流れているだけなのに、レコード会社やメディアが、他に数多いるバンドを差し置いて「この盤はすごい!」とそのバンドの音を取り上げ、そしてその盤が実際に市場において大量に流通してしまうんだからすごいと思う。だってちょっと聞けばひょっとして誰にでも作れそうな曲だし、ちょっと練習すればプレイできそうな曲なんだもの。これがピストルズみたいに音楽以外に何かセンセーショナルな要素でもあればまた違うんだろうけど、BRMCにそういった面があるなんて聞いたこともないし、純粋に音楽一本勝負みたいなバンドだという認識が自分にはある。なので、繰り返しになるけど、ほんと、数多あるバンドの中から「このバンドのレコードを自国で売り出そう!」「雑誌でプッシュしよう!」と思う、個人レベルの感覚に留まらず、ビジネスレベルでそれをやれるっていうのはすごいことではないかなと思う。その結果だけをみて「ブームをでっち上げている!」と揶揄するのは簡単だけど、きっと自分のやっている仕事とかを振り返ってみればそれをやるのがどれほど難しいことかは分かるんじゃないかなぁ。特に、ただ技術が高けりゃいいってもんじゃないロックンロールという曖昧極まりない技術分野の中で、コレ!という技術屋チームを、それも海外からリクルートしなければならないって、なんかその技術自体すごいことだなと思う。BRMCみたいな音楽をやっているバンドって世界中にたくさんいるだろうし、もし似たようなレコードを何万枚も並べられて、「こっからひとつ選べ。」とか言われたとしてもきっと選べないよ。企画書とかどう書いてんだろ。もちろん実際にはあまり売れなかったケースとかもたくさんあるんだろうけど。
「東のStrokes、西のBRMC」というコピーもいまや懐かしい感もあるが、なんかこのBRMCのセカンドは、そうやって選ばれたモノの責任感とか気合とかもあったんだろうけど、「分かる人には分かる」的なアンダーグラウンド志向がいい感じに薄まって、分かりやすい方向に路線転換してくれたなぁと思う。今後この路線をさらに拡大していくのかどうかはわからないけど、Dandy Warholsの曲の半分が「Bohemian Like You」(=言わずと知れたあの携帯CMソング)みたいな感じだったら、彼らも日本でもっと売れるんじゃないかなぁと思ったりするんだけど、そんな感覚に非常に近いアルバムだと思う。
| Disc Review Top | Home |

Send comments to: Katsuhiro Ishizaki.Last updated: 08/31/03
|
|
|