Burps Online

Disc Review

- September 2005 -

A Bigger Bang Rolling Stones

A Bigger Bang ストーンズファンは難しい。過去のカタログを同じ棚に並べて、「ストーンズの新譜、マジ最高!」と物分かりのよさげなウソを自分に対して付くのも、「昔のアルバム聞いている方がマシ。」とそれ言っちゃお終い的な本音を言うのも憚られるのがストーンズファン。バンドに現在に対して色々と注文も文句も付けたくなるのもそのバンドを深く愛するが故のこと。人それぞれのストーンズ観は、40年というバンドの歴史を紐解く過程で様々な方向に向かい、時を重ねるほどお互いのベクトルは遠く離れたものになっていく。よってそんなファンすべての嗜好を満足させられるマテリアルを用意するのはもはや不可能。自分は「ベガーズ・バンケット」のように100回以上聞き倒してどうにか理解できるようなゴリゴリしたアコースティックアルバムか、「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」と「メイン・オフェンダー(=キースソロ)」を足して2で割ったようなガレージロックを期待しているんだけど、ストーンズはそんな要求には単純に応えてくれない。かといって失望したのかというとそういうわけでもない・・・・というのは今回のアルバムを聞いた多くのストーンズファンに共通することだろう。

かつてエロ本の定番広告だった男性専科な局部矯正用パンツを思い出させるアルバムタイトルと、「そよ風の贈り物」のジャケで天を仰ぎ見るホイットニーを思い出させる「彼女の視線」「孤独な旅人」「スローで行こう」「虚しい気持ち」といった日本語タイトルの羅列に脱力しながら、ローリング・ストーンズ8年ぶりの新譜アルバムの印象を決定付け、かつ最も聞き応えのある1曲目「ラフ・ジャスティス」 に針を落とす。イントロでタメにタメてから回り始めるスネアと、Aメロ中に何の脈絡もなく唐突に鳴るクラッシュシンバルに、ガンを患い危うく天国のブライアン・ジョーンズに再会するところだったチャーリーの名前を呻かずにはいられなくなる。昨今のガレージロックにも負けないこんなバカロックは、10年前の「ユー・ガット・ミー・ロッキング」以来久々に聞かされたような気がする。

しかしその後数曲は、ミック・ジャガーのソロ楽曲のように聞こえてしまい、ストーンズとしての面白みとスリルに欠けていて残念。「スローで行こう」や「バック・オブ・マイ・ハンド」はまるで最近のエアロスミスのアルバムに入っていそうだし、自分の中ではもうなかったことになっている「アウト・オブ・ティアーズ」チックなバラード「ストリーツ・オブ・ラブ」や、最近の緩いキースの作風そのままの「虚しい気持ち」は、BGM的に聞いている時以外は問答無用でスキップしてしまう。キースにはむしろ「イット・ウォント・テイク・ロング」みたいなオープンGでゴリゴリやる曲を歌ってほしいんだけど、期待通りにやればやったで「出たよ〜。得意の〜。」みたいになってしまうんだろうから、やっぱストーンズファンってのは難しい。

むしろ好きなのは、チャーリーのバスドラ8分打ちに興奮させられつつも、あまりにシンプルすぎてボツったミックのソロ用テイクを引っ張り出してきた感も捨て切れない「Oh No, ノット・ユー・アゲイン」から始まる後半のBサイド的な曲。バラード「孤独な旅人」も名盤「スティッキー・フィンガーズ」や「刺青の男」のB面に入っていてもおかしくない。特に最後の4曲は自分の大好きな「ヴードゥー・ラウンジ」のB面を凌ぐほど素晴らしい。「スウィート・ネオ・コン」でミックのハープから始まるイントロがとても短いながらもスリリング。リフというリフを雑多にぶち込んだ「猫とお前と」は、キースとロニーに頑張ってもらってぜひライヴで再現してもらいたい。「ドライヴィング・トゥー・ファスト」も同じだが、チャーリーのキックとシンクロするリズミックなベースラインはまるでビル・ワイマンが戻ってきたようにさえ感じさせてしまう。この2曲はライヴのオープニングでも行けそうだ。ラストの「インフェミー」はキースなのにキースじゃないみたいなリズムが最高。これもロニーにがんばってほしい。いやこの際サンプリングでもなんでもいいから。

そのロニーの影の薄さも気になる作品だが、ワールドツアーの開始日という納期を守るためには、ガンで闘病しているメンバー(=チャーリー)がいようが、アル中で苦しんでいるメンバー(=ロニー)がいようが、プロジェクトの進行を止めないミック課長とキース主任がいてこそ完成できたアルバムとも言える。予期せぬリソースの欠員がありながらも納期と品質は確保し、マーケティングも販売も期待通りの結果を出す(・・・はず。)なんていうのは、ビジネスマンとして尊敬に値する。いわゆる「後期」と呼ばれているここ20年ちょいのストーンズは、過去の没テイクを寄せ集めた「刺青の男」に始まり、離れ小島のスタジオに隔離させられた「スティール・ホイールズ」、ミックのソロアルバムの延長戦で作った「ブリッジズ・トゥー・バビロン」に至るまで、納品が間に合わずベスト盤で穴埋めした「フォーティー・リックス」と、ほぼ解散状態にあった80年代中盤を除けば、まずツアーありきのアルバム作成プロジェクト作業がサイクル化してきている。しかし、そのサイクルを重ねて歳を重ねる毎に「これがラストアルバム?」「ラストツアー?」と逆に言われなくなっているどころか、「今後も当分は大丈夫なんじゃないか?」という安心感さえ与えてしまうアルバムってのもよく考えてみればすごいことなのかもしれない。「かもしれない」というのは、キースもよく言うように、ロック界にはまだストーンズと比較対象となるような前例も競合もないからなんだけど、だけどやっぱり平均年齢60歳を超えるバンドが作ったアルバムということを冷静に考えてみるとやっぱりすげえとしかいいようがない。ここまで来たらやれるところまでやってみようというミックのビジネスマン的な野望から来ているのかもしれないが、そうは言っても自分達の仕事に対して愛情を持てないとここまでやってられないだろう。しかしだからといってシラフのままじゃ単純に拳を突き上げてツバを吐き散らしながら「ストーンズ最高!」と満面の笑みを湛えるロックバカにもなれない。

やっぱりストーンズファンは難しい。というか単純にやなやつだ。



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Last updated: 09/05/05