Burps Online

Disc Review

- November 2001 -


Goddess In The Doorway Mick Jagger


Goddess In The Doorway 結成40周年を来年に控えたローリング・ストーンズのボーカリスト=ミック・ジャガーのソロアルバムがつい先日届けられた。実質の解散状態にあったと言われる80年代半ば出たファースト「シーズ・ザ・ボス」から数えて4作目となり、個人的には昨今のストーンズ関連の仕事の中で最も素晴らしかったと思う「ワンダーリング・スピリット」発表から9年の歳月を経てのリリースとなった。

自分がミック・ジャガーと初めて出会ったのは(ってもちろん実際に会ったわけじゃないが)、まさにその悪名高きソロアルバム「シーズ・ザ・ボス」発表の頃だった。マーサ・アンド・ザ・バンデラスのカバー「ダンシング・イン・ザ・ストリート」でデヴィッド・ボウイと共演したのもちょうどその頃だったように思う。ローリング・ストーンズは完全に活動休止状態だったから、表立って活動するミック・ジャガーを、大きな分厚い唇を持った「ソロの」ロックシンガーだと思っていた。友達とも「ミック・ジャガーって、顔も、声も、なんだか気持ち悪いなー。なんかいやだなー。」といった話をしていた。(実際にはもっと東北訛りが入っていたけど。)ライヴ・エイドでティナ・ターナーと「イッツ・オンリー・ロックンロール」と「ミス・ユー」を歌ったときも、ソロシンガーとして歌っているんだと思っていた。ミックの次にボブ・ディランと出てきたロン・ウッドとキース・リチャーズのことも全然知らなかったし、気にも留めなかったし、ミックとキースが別々にステージに出てきたことが物議を醸し出していることも全く知らなかった。

それと同時期に、NHK-FMで渋谷陽一の司会によるストーンズライヴのアンコール番組が放送されていた。当時、エアチェック(=ラジオ放送をテープに録音すること。)に余念のなかった自分は、この放送もテープに録音していた。いや、正確には、我が家にあったラジカセはかなりボロかったので、実際の録音は高価なステレオを持っていた友達にお願いした。 多分、この時、ミック・ジャガー=ストーンズのボーカリスト、ということを初めて意識したんだと思うけど、耳に残ったのは、「あ! シュドゥビ! しゃーらー、しゃーらー。」というリフレインだけ。(=78年発表「シャタード」) ブートまがいの音質で、当時の自分には聞くに堪えなかったのもその一因かもしれないが、はっきり言って中学生当時の自分が持っていた、ミック・ジャガーそしてローリング・ストーンズに対する印象は、余りいいものではなかった。(スティーブン・タイラー&アクセル・ローゼズも然りだったのだが。)

数年後にキース・リチャーズが初のソロアルバムを出した。今思えばそれがストーンズ解散の決定的要因ともなってもおかしくなかったわけだけれど、当時の自分はキース・リチャーズ=ストーンズのギタリストということすら露知らず、「キース・リチャーズという人が1枚目のアルバムを出すっていうだけなのに、なんでそんなに大騒ぎしてるんだろう? ギターは結構かっこいいけど、動きがカクカクしているし、歌も下手くそなのに。」といった感じの印象しか持っていなかった。その後間もなくして。スティール・ホィールズというストーンズ大復活アルバムが出て、ようやくローリング・ストーンズ = ミック・ジャガー + キース・リチャーズ、というロック界最重要定理を知ることになったわけだが。(そしてその直後、彼らのライヴ映像を見てから、ストーンズは自分にとって無くてはならないものとなる。)

よって、ミック・ジャガーをソロシンガーとしてイメージしていた自分には、好き嫌いは別として、彼がストーンズを離れてソロアルバムを出しソロツアーに出ることに対する抵抗感は少ない。むしろ、前作「ワンダーリング・スピリット」が素晴らしかった分、アルバムに対する期待は大きかった。今度のアルバム「ガッデス・イン・ザ・ドアウェイ」も、前作には及ばないものの、結構いい感じの曲がポツポツと入っている。当たり前だけれど、自分の比較対象はリアルタイムのロックンロール全般であって、過去のストーンズタイトルや、同年代のミュージシャンとかでは決してない。

その中でも素晴らしいのがまず2曲目の「Joy」。ピート・タウンゼントと思われるギターリフがその中盤を印象深くさせているが、やはりなんと言ってもU2のボノの声がいい。最初に聴いたときにはキース・リチャーズがゲスト出演しているのかと思ったぐらいに激渋なボノのボーカル。曲の全体的な印象も、使い古された言い方だとは思うけど、60近い爺さんがやっているようにはとても感じられない。 20〜30歳ぐらいで、自分を「オヤジ」「年寄り」呼ばわりしている人は猛省するように。(to オレ)

レニー・クラヴィッツと共同でプロデュースを手がけた4曲目「God Gave Me Everything」は、レニーの懐古趣味に、わざわざミック・ジャガーが合わせてあげているような雰囲気があってとても面白い。むしろキース・リチャーズのオープンチューニングのギターをバックに歌わせてあげたいようなナンバーだ。

そして自分がこのアルバムの中で最も好きなナンバー、それは10曲目の「Gun」だ。アーシーでトラッドなストーンズファンが最も嫌うであろう、マッシブ・アタックやアンダーワールドのようなトランステクノの要素を取り入れた四つ打ちバスドラパターンの曲なのだけれど、自分はアンダーワールドをちらっと聴き始めた頃から、「ミックの声って、ひょっとしてこういうのにハマるんじゃない?」と思っていたのだが、その予想はまさにドンピシャ。後半のギターとストリングスのオーバーダブは蛇足なような気がするほど、ミックと四つ打ちの相性は非常にいいことを再確認。実は、「ミス・ユー」や「ダンス」なんかですでにその辺は実証済みだったりするんだけどね。

ミック・ジャガーが、こうやって意図的に現代のロックとの接点を持とうとすればするほど、生粋のロックンローラーとしてのキース・リチャーズのイメージは増大し、「キースこそストーンズ!」的なイメージを古くからのストーンズファンの間で増長させる。 しかし、逆に言えば、我々が持つキースに対するそのイメージも、ミック自ら敢えてビジネスマンのイメージに徹することによって、ミックの思惑通り意図的に作られたものだとしたら・・・・。

「ブラウン・シュガー」のギターリフを、ミックが作ったというのは有名な話だ。



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Last updated: 11/10/01