■ 「LOVE」について
少なくともラスベガスではその存在を知らぬものはいないパフォーマンス集団=シルク・ド・ソレイユによる新しいショーがこの LOVE だ。アバ、エルトン・ジョン、クイーン、ザ・フーなど、ロックミュージックを使ったミュージカル的パフォーマンスは過去に数あれど、ビートルズの楽曲を使ったのはこれが初めて。数ヶ月前にポール&リンゴ出席のもとプレミア公演が行われて以来、先月のアルバム LOVE の発売により日本でもその存在を広く知られることとなったパフォーマンスである。
自分が宿泊したラスベガスの老舗大型ホテル&リゾート=ミラージュホテルは文字通り LOVE 一色に染まっており、ホテルの外壁、ビルボード広告、カジノフロア、エレベーターにいたるまですべて LOVE & Beatles 関連だ。極めつけは REVOLUTION で象られたホテルのルームキー。ここまで徹底した Beatles はファンにとってはうれしい限りだ。(・・・そうじゃない人にはうざいかも。)
さらにミラージュホテルのセルフテレビ CM では LOVE プロモ用のショートフィルムが繰り返し流されていた。ショーのダイジェスト映像に始まり、舞台監督とリンゴ/ポールのインタビューが挿入。オノ・ヨーコの「ビートルズはこのショーでラスベガスから LOVE を広げようとしているの!」というあんたに言われてくねぇ的な発言も入っていた。
1日2回公演の深夜の部=22:30 開始のショーを選択したチケットは、敢えて最後列の一番安い席 (=US$75)を予約。「安い席の人は手拍子を、高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らしてください。」と言っていたのはジョン・レノンだからね。
会場は LOVE 公演用に準備された 360度全方向型の LOVE THEATRE で、これもミラージュホテルの中にある。ホテルの各部屋や各施設に辿り着くためには必ず通らなければならないカジノフロアの左手奥が LOVE THEATRE の入り口となっており、BOX OFFICE やら休憩スペース、グッズ売り場が併設されている。自分の滞在中に REVOLUTION という名のビートルズカフェ&バーがオープンし、セレブを対象としたオープニングイベントが行われていた。
チケットホルダーのみ入場できる LOVE THEATRE のロビーにあるカクテルバーでオリジナルカクテル「Can't Buy Me Love」と「A Hard Day's Night」を注文。1000円以上するので安い代物ではないが、オリジナルのマグカップに注がれるラージサイズを頼むことをお勧めしたい。ただ味はどちらもかなり甘めなのでドライなカクテルが好きな人にはちょっと辛いかも。自分がこのカクテルを飲み干したのもショーの最後のほうだったぐらいだから。
360度全方向型のステージ上には4方向に薄い幕が張られ、客席後方にはさらに大型スクリーンがある。開演前の様子をちらっとデジカメで撮っていたらセキュリティに見つかって怒られた。
■ パフォーマンス
ステージ暗転後の Because は完全にショーのイントロ扱い。A Hard Day's Night の Gsus4 コード一発のイントロが大音量で鳴り、The End のドラムソロとともに4つのせり出しから体でリズムを刻みながらメンバーが登場。The End のギターソロで徐々に盛り上がり、天井の四方から宙ぶらりんの人達が飛び出してくる。ステージ上は一気にカオス状態になり、Get Back ともに緞帳がすべて上がる。ポールのボーカルが解き放たれた瞬間、まるでビートルズのライヴでも見ているかのような錯覚に陥って号泣。まさかロックミュージカルで泣くとは思ってなかった。
あまりトータルなコンセプトを持たず、基本的に歌詞の内容や曲調によってショーの構成は変わるようだ。ビッグバンによるこの世の誕生が Get Back のコンセプトだとすれば、独裁者によるこの世の崩壊が Eleanor Rigby だろうか。ストリングスの響きがカオティックなショーに拍車をかける。
人を乗せた巨大なゆりかご(?)がステージ中央上空を揺れてアクロバティックな演技を見せるI Am The Walrus。50〜60年代の古き良きアメリカを謳歌するようなパフォーマンスと初期のビートルズの生々しいグルーブが心地いい I Want To Hold Your Hand。曲後のキッズの歓声とオーディエンスの歓声がシンクロする。Drive My Car では白いワーゲンのような車がステージ中央に登場。この曲との What You're Doing とのミックスは見事の一言。この白いワーゲンはのちほどばらばらに解体された形でステージに再登場する。
白い衣を纏った美しい女性が空中を舞い、ガラにもなくセンチメンタルな気分になった Something。
サーカス団というコンセプトのもと、複数のトランポリンを人という人が飛び回る Being For The Benefit Of Mr.Kite。アールの付いた複数のバンクを4人のローラースケーターがジャンプを繰り広げる Help。ともに息の合った演技によって前半のハイライトを迎える。
レコードにはイントロ/アウトロしか収録されていない Blackbird では、飛べない四羽のカラスを空に飛ばそうと奮闘するアクターが代わりにメインのフレーズを歌う。圧巻だったのは Tomorrow Never Knows のドラムループに乗った Within You Without You で、客席の前部までを覆い尽くした巨大な白い布の中央で上下する船と人々が、荒々しい航海の様子をリアルに伝えている。白い布を波立たせていたのは席間にいるセキュリティ達だったが、布は曲の終了直後にステージ真ん中に吸い込まれてあっという間に消えてしまった。
各座席にもスピーカーが埋め込まれており、会場用のスピーカーからはジョンの声が、耳元の座席からはポールのコーラスがそれぞれ聞こえてくる Lucy In The Sky With Diamonds。文字通りクラゲやら海中生物やらが空中を漂った Octopus Garden。黒人ダンサーのタップダンス&ボディクラップが Why Don't We Do It In The Road のイントロのループへとつながり、Lady Madonna のサビへと繋がる。Lady Madonna のイントロが弾かれ始めたところで女性黒人ダンサーと操り人形を持った他のダンサーがステージ上に登場して軽快なステップを踏み始める。
リンゴのドラムに聞き惚れた Here Comes The Sun / The Inner Light 終了後に暗転したステージ上に、「シュッ」という掛け声の都度異なるダンサーにスポットライトが照らされた Come Together。
しかしこの後の Revolution から Hey Jude までのプレイは残念ながら何も覚えていない・・・。曲が場内に流れた感触は残っているんだけど、ステージがどんな感じだったかはなぜかまったく印象に残っていない・・・。ステージ上がカオスになった Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band はちょっと覚えているんだけどね。
他に覚えているのは曲間のビートルズのシルエットを使った寸劇で、ひとつは4つの薄い幕に投影された初期ビートルズのメンバー達のもので、どの曲をプレイするかで口論するというもの、もうひとつはアビーロードアルバムのジャケットに登場した横断歩道を渡ろうとするが交通量が多くてなかなか渡れないというものだった。
実質のアンコールとなる All You Need Is Love で大量の紙ふぶきが飛び 1時間40分ほどのショーは終了。紙ふぶきをお土産に持って帰り、ごった返すロビーで記念写真を撮り、グッズ売り場で LOVE のDVD付きアルバム($30)を購入した。
■ あとがき
なにせ敢えてアルバム LOVE を予習せずに臨んだ本公演だったので、楽曲のリミックスそのものを楽しみ、かつクリアな 5.1 CH の音像を体感しに行ったような感じだった。それが証拠にパフォーマンスの詳細はあまり覚えていない。でも席が最後列だったこともあり、空中を舞うパフォーマー達の姿が良く見られて良かった。思ったよりもずっとステージにも近かったし。
しかしこのショーを見て泣くとは思ってなかったなぁ。
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