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Musichology

勝手な音楽コラム
ジョージ・ハリソン?

同じ「Harrison」なのに、どうして「Harrison Ford」は「ハリン・フォード」で、「George Harrison」は「ジョージ・ハリン」なのでしょうか? 英語を含む外国語のカタカナ表記。海外のミュージシャンの名前及び曲名などのカタカナ表記は、普段なにげに使っていながらそのオリジナルの発音と比較してしまうと、時として不自然に思えてくるもの。はて、どうしたらいいものやら。


◇ ミュージック・マガジンとレコード・コレクターズ誌

このカタカナ表記問題にいち早く(?)着目し、表現方法にある程度の工夫(と混乱)をもたらした音楽雑誌といえば、ミュージック・マガジンとレコード・コレクターズ各誌でしょう。「スモール・フェイズ」「キング・クリムン」「ロシー・ミュージック」「カート・コベイン」「ボビー・ウォマック」などなど枚挙にいとまがありません。出来るだけ英語の発音に近づこうとするこの試み。まあ努力は買いますが、はっきり最初に自分の結論を言っちゃうと、これって相当無駄な努力だと思います。そこまでするなら自分の雑誌の名前を「ミューゼック・マガズィーン」なり「レッコードゥ・コレクトゥーズ」なりにまずすべきだと思いますが。

■ ジョージ・ハリスン

まず日本で初めて(?)、その日本語の表記法の問題点が表面化したのがこの「ジョージ・ハリスン(George Harrison)」ではないでしょうか。これまでの(今でもそうですが)「なんとかson」という名前は「なんとかソン」という風に表記されてきました(ただし上記二誌は除く。)。例えば「マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)」「マリリン・マンソン(Marilyn Manson)」なんかが代表的な例ですね。しかしなぜジョージだけが特別なのか? 分かりません。たまに「ジョージ・ハリソン」と発音する人もいます。でも一般には「ジョージ・ハリスン」ですよね。まあどっちでもいいのですが、最初に決めた人が「ハリスンの方が原音に近いぞ!」ってことだったのでしょうね。もう一般に認められちゃってる表記方法ですから、改めて変える必要もないでしょう。矛盾を承知でそれを認めちゃう。これ大事です。

■ ピーター・ガブリエル

恐らく最初に日本語表記した人は「Peter Gabriel」という名前から単純に「ピーター・ガブリエル」としてしまったのでしょう。一方上記MM誌とRC誌での日本語表記は「ピーター・ゲイブリエル」となっています。まあ確かにそっちのほうが原音に近いような気もします。でもちょっと待って下さい。それじゃあ「ピーター」はどうなりますか。それに最後の「エル」のところは? ちょっとでも英語をご存じの方なら「Peter」は「ピーター」とは発音されないことは分かるでしょう。最後の「エル」もそうです。前者はイギリス英語ならば「ピートゥ」に近く、アメリカ英語ならば「ピール」に近いはずです。語尾の「エル」も同様で、もし原音により近づくためには「ピートゥ・ゲイブリオ」とせねばなりません。なおかつ「リ」のところは巻き舌です。そしてアクセントは「ゲイ」のところです。しかしそんなこと日本語で表現できますか? それにそんな日本語じゃ混乱しませんか? そもそもなんか笑えませんか? だからもうこのさい「ピーター・ガブリエル」であきらめるのです。いいんですそれで。カート・コバーンも「カート・コベイン」でもなく「クートゥ・クベイン」でもなく「カート・コバーン」でいいのですこのさい。ついでに言えば「オアシス」は「オウエイスィス」じゃなくて「オアシス」でいいんですよもう。

■ ジョン・レノン

上の「ピーター・ガブリエル」のところでイギリス英語とアメリカ英語のことが出てきましたが、これも日本語表記する際に重要なポイントとなります。この「John」は一般のクイーンズイングリッシュではどちらかというと「ジョン」に近い発音がなされますが、アメリカですと「ジャン」に近い発音になります。まあジョン・レノンはイギリス生まれですから、「ジョン・レノン」でいいのでしょうが、じゃあアメリカ生まれの「ジョン・メレンキャンプ」はどうなりますか? 「ジャン・メレンキャンプ」?「ジャニ・ミッチェル」?「ジャン・バン・ジャヴィ」? なんか混乱しますよね。なおかつ「Lennon」はどちらかと言えば「レヌン」に近いですから、アメリカ流に表記すると「ジャン・レヌン」になり、誰だか分かりませんね。ジョニ・ミッチェルの「Mitchel」は「メッチョ」の方が近いですから「ジャニ・メッチョ」・・・・。困っちゃいますね。(でも彼女はカナダ人だったなそう言えば。)

■ ヴァン・ヘイレン

「Van Halen」、すなわち日本語にはない「V」の発音と表記ですね。まあこの場合「ヴァン・ヘイレン」という表記がはじめから一般化されていますので、これはこれでいいのですが、たまに「バン・ヘーレン」などと表記するメディアもありこれも混乱の一因となっています。まあもう少し正確に表記するならば「ヴァン・ヘイルン」の方が近いかもしれないですが・・・・・。しかし私にはこの「V」の発音だけ日本語表記の上で特別扱いされるのかがいまいち介せません。じゃあ日本語にない「th」の発音はどうしますか? じゃあ「v」と同様に下唇を噛む「f」の表記は? 「L」と「R」は? 「va」と「ba」が「ヴァ」と「バ」というように別々の表記方法を用いるのであれば、「Keith」と「Kiss」の最後の「ス」の表記方法にもバリエイション、いやヴァリエイションがあってもいいような気もします。ですが実際問題そんなことは不可能です。不可能なら最初からやらない。「Very Best Of」は「ヴェリー・ベスト・オヴ」ではなく「ベリー・ベスト・オブ」でいいのです。

■ ティム・バックリー

ついでにもう一つ。日本語で言う「ティ」と「」、それから「スィ」と「」の違いですね。例えば「ティ」と「チ」ですが、アコースティックギターのブランド「Martin」は「マーチン」と表記され発音されることが多いですが、「Sting」は「スチング」ではなく「スティング」ですよね。これはほんと曖昧なところで「カーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)」を「カーチス・メイフィールド」と発音してもあんまり変な感じはしません(あくまでも主観ですが。)。一方「スィ」と「シ」ですが、これもちょっと問題ありです。例えばスマッシング・パンプキンズの「ダーシー(D'arcy)」。これももっと正確に書くと本来なら「ダースィー」としたいところです。でもなんかヘンですよね。あと「デイジー・チェインソー(Daizy Chainsaw)」も。「デイズィー・チェインソー」といきたいところです。でもそうするとやっぱヘン。あんまり考えすぎない方がいいかもしれません。

■ ポリス

さらに問題となるのは英語の発音で重要なアクセントの問題です。ご存じの通り「Police」の発音は「li」のところにアクセントあるためどちらかと言えば「ポリース」といった感じの発音になります。音楽評論の大家、中村とうよう氏もおっしゃっていました。「アクセントのある文字の次に「ー」を入れてはどうか。」。でもちょっと待って下さい。それで解決しますか? 例の「ポリース」だって、この日本語を見た人は「ポ」にアクセントを置くかもしれませんよ。実際に「ポ」にアクセントを置いてもそんなに不自然じゃありませんし。上の例の「ベリー・ベスト・オブ」だって、まさか「リー」のところにアクセントを置く人はいないでしょう。「ガース・ブルックス」だってそう。ごくごく平坦に読むことだって出来ます。まあいいじゃないですか。最初に「ポリス」って命名しちゃったんだから。あきらめが肝心。外国人と英語で音楽のことを話し合う場合には改めて勉強すればいいんです。どんなにうまくカタカナで表記しようとしたって、どうせきちんとは聞こえないんですから。

■ ビリー・ジョエル

これはもう「ジャニ・メッチョ」のところでも触れました。ビリー・ジョエルの「Joel」はどちらかと言えば「ジョー」という発音に近く、ほとんどグリーンデイの「ビリー・ジョー(Billie Joe)」とおんなじ様に聞こえます。アメリカ人はこの違いが分かるのでしょうが、日本語表記からは違いがまったく分かりません。たしかに「ビリー・ジョエル」と日本語風に発音したのでは、アメリカ人は誰のことだかすぐには分からないことでしょう。でもいいのです。日本語表記は日本語がわかる人たちの間で通用しているものあって、我々の間で区別が付けられればそれでいいのです。下手に英語の発音に近づけようとすると、それこそ混乱を招きます。

■ レット・イット・ビー

歌の中では「エルピー」と聞こえるだとか、様々な議論を巻き起こしたこの曲。英語は単語と単語の間の音がつながったり、省略されているように聞こえたりすることがあります。日本語にはあんまりこういうことがないのでさらに迷わされることがあります。しかしそれを忠実に日本語表記しようとすると大混乱を引き起こしてしまいます。例えばエアロスミスの曲「ラヴ・イン・アン・エレベーター(Love In An Elevator - 邦題:エレベーター・ラヴ)」だって割と正確な表現をしようとするのであれば、「ラヴィナネルヴィールー」としなければならないでしょう。とても英語の曲には見えませんよね。

■ レッド・ツェッペリン

あとなぜか脈絡もなく、オリジナルの発音と日本語表記がまったく異なってしまっているケースもあります。例えばこの「レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)」。英語を見てもらえば分かるように、なんで「ツェッペリン」になってしまったのか分かりませんよね。普通ならば「レッド・ゼッペリン」もしくは「レッド・ゼップリン」になったはず。昔巨人の黒人リリーフエースとして活躍した「サンチェ」が、「サンチェス」という名前では語呂が悪いということで、「サンチェ」に変えられてしまったというのと同じことなのでしょうか。まあこれはこれでいいんですけど。

■ ユッス・ンドゥール

何も海外のミュージシャンは英語圏の人たちばかりではありません。これにはどう対処すべきか、私にはまったく分かりません。上のMM誌とRC誌はどのような対策を立てているのでしょうか。中国語などはアクセントの付け方がかなり異なっていて、正確に日本語で表記しようと思ったら一苦労でしょう。それに日本では中国人の名前は日本の漢字の読み方に変換されるのが普通です。台湾出身のプロゴルファー陳志忠選手が、日本では「ちん・しちゅう」と発音され、西洋では「ティー・シー・チェン」と発音されているようにです。ただしミュージシャンの場合「フェイ・ウォン」というようにオリジナルに比較的に発音され、表記される傾向があるようです。この辺りは音楽界だけじゃなく議論されるべき点ではないでしょうか。


・・・といったように外国語の日本語表記には矛盾と混乱を伴うものです。ただし私の場合、案外どうでもいいことかなと思っています。まあ最初に日本語表記した人の勝ちとしたいところです。へんな英語コンプレックスを持たない方が賢明かと思います。表記された当人から文句でもこない限り、まあそんなところでいいのではないでしょうか。

ちなみに外来語の表記方法に関しては、文部省の国語審議会で統一されているそうです。

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Last updated: 7/ 22/ 98