BBSなどで使っているこの「Kats」という名前。実のところいまだに馴染んでいないばかりか、あまり好きでもありません。でもこの名前、自分で考えたんですよね。
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私のファーストネームは「Katsuhiro」と言います。でも日本の英会話学校に通っていた頃から、このファーストネームが悩みの種でもありました。外国人、特に英米人はこの名前をうまく発音できません。発音できたとしても、かなりの時間がかかり、なおかつ覚えるのに一苦労するようで、何度も何度も繰り返し名前を教えなければなりませんでした。
でも英会話学校ならまだいいのです。週に何度かは顔を合わせるし、外国人教師の方も日本人の名前特有の発音に慣れるのでさほどそのことは問題では無くなってきます。しかし私がいざアメリカへ留学するとなったとき、この名前の問題はより重大なものとなってきました。というか私はこの問題についての考察を10代の頃より行なってきました。とにかく「Katsuhiro」という名前をそのまま読ませたのでは「かっとすはいろ」と発音されてしまうのが関の山でしょう。仮に「カツヒロ」だ!と言って、発音させようとしても、特にこの日本語の「ツ」の発音に弱いアメリカ人は覚えるに一苦労するであろうと考えました。そうでなくても苦労する海外生活。名前の問題で苦労するなんてナンセンスです。心身的苦労を増やすだけです。
そんな場合、まず考えるのが、ジョン、リック、フレッドなどの英語の名前を付けること。「マイク真木」「デイヴ佐竹」「パンチョ伊東」なんかがいい例でしょうか。でも自分の親のつけてくれた名前を捨てて、人の名前も発音できないようなアホな英米人に迎合するようなイメージを持っているのでこれは絶対にボツ!! そんなことをしたらフランスではフランス語の名前、メキシコではスペイン語の名前をそれぞれつけなければなりません。またそうしないと英米優位主義を助長するようで、とにかく避けなければならないことでした。でも台湾人、香港人なんかは、10代の時に自分で英語の名前を考えなくてはならないんですよ。まったくナンセンス! ふぁっきん・すとぅーぴっど・あすほーるです。だって日本にいる白人の男性から「ボクノコト、ヒロシ、ッテヨンデクダサーイ」って言われたら変だと思いません? 素直に「ヒロシ」って呼んであげられますか?
次に考えるのはまあ日本でも友人間などでお互いを呼び合う時に使われますが、自分の名前を省略、簡略化して相手に呼びやすくしてあげるということです。しかしながら私の場合、友人から自分のファーストネームで呼ばれたことは一度も無く、いつも名字の「いしざき」で呼ばれていました。10年以上も友達なのに、フルネームを知らない人さえいます。そんなわけでいいアイデアはすぐには思い浮かびませんでした。
まず考えたのが、アメリカ人にも呼びやすいであろう「Hiro(ヒロ)」という名前。でも嫌いなんですこれ。なんか軟派なイメージあるし、この名前で呼ばせている人は結構いるはずです。なおかつとにかく「ヒロ」と呼ばれても自分のような気がしません。だからこれもパス!
そして「ヒロ」とくれば次はファーストネームの前半部分「カツ」ですね。うん、まあこれならいいかな、とも思いました。母親によく「かつー!!」と怒鳴られていましたし、とりあえずこれなら自分のような気もします。
でも問題は表記の仕方でした。つまり「Kats」にするか「Katsu」にするかでした。最終的には前者を選択し、現在も使用しているわけですが、日本人には後者の方が馴染みやすいはずです。でも「Katsu」だと「かっとすー」と発音される可能性もあるんですよね。それに「u」で終わるのってあんまりインターナショナルじゃないかな、なんて思ったりもして(笑)。それに「Kats」の方がスペル説明しやすいですし、猫の複数形「Cats」と結び付けて考えられるので、より簡単かとも考えました。でもこれは後で悲劇を生むのですが・・・
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さあ、アメリカに来ました。当然たくさんの新しい人と出会います。なにせ友人、知人等、1人もいない上に、日本人もいませんから、嫌が上でもすべて英語での自己紹介になります(当たり前だ。)。
まず何はともあれ会っておかなければならないのが、大学の留学生アドバイザー。いざという時に頼りにしなければなりません。よって渡米し、引越しを済ませた後、真っ先にそのアドバイザーに会いに行きました。彼女は私の持参した学生ビザ、I-20を確認してまず一言。「かっとすはいろ・あいしざき?」・・・・・・。一瞬何のことか分からずきょとんとしてしまった私。数秒してどうやら私の名前を発音しようとしているのだな、ということが分かりました。
さあ、ここで10代のころから考え続けてきた私のニックネームを披露する時がやってきました。んで、私はこう言いました。
「You can just call me Kats !!!」
おおおお! うそっぱちな笑顔を無理矢理作っていることもあって、何という居心地の悪さなのだ!! やっぱりどう考えてもぎこちない「Kats」という名前。もうまるで自分のことじゃないようでした。なおかつ「Kats」のところを英語っぽく「キャーツ」と発音してしまったため、なんともどうにも自分を騙しているような気にさえなってきました。
でもその留学生アドバイザーは、
「おお、簡単でいいわねー。キャツね。オッケー。」
というわけでその日から私の呼び名は「Kats(キャツ)」ということになってしまったのでありました。
それから数日後、私はとある黒人連中と友達になりました。その留学生アドバイザーへの自己紹介で言え知れぬ罪悪感にさいなまれていた私は、このときばかりは自分の名前を正確に発音することにしました。
「カツと呼んでくれ。」
まあその場はうまく行き、その黒人連中も結構苦労しながらも「カツ」という発音を覚えてくれました。しかしその黒人の一人が友達からの電話を受け、話し始めた時には愕然としました。
「おう、今日本人の友達と一緒にいるんだよ。カツって言うんだけどよー。はあ?? 違う!コックスじゃなくて、あははは、カツ!!」
「コックス」、すなわち「Cocks」、すなわち「チ○ポ」・・・・・。そうかあ、俺の名前は「チ○ポ」に聞こえるのかあ・・・・・。猫もやだけど、チ○ポのほうがやだなあ・・・・。というわけで、私はその時から人には「キャツ」と呼ばせることにしました。
その後、知り合った台湾人には「猫じゃん? なんじゃいそれ。」と露骨に言われ、香港人の女性には「ケツ」と発音されるなど、インターナショナルな理解と誤解が進んでいきました。
そんなこんなで、緊張の大学院の授業がスタート。1クラス当たりの学生の数が少ないため、当然一人一人自己紹介せねばなりません。当たり前ですが、私以外はみなアメリカ人です(みんな頭良さそう・・・)。さあ自分の番がやってきました。
「My name is Katsuhiro Ishizaki......」
こう言った時、クラスメイトには明らかに動揺の色が広がります。「なにい? 難しくて発音できないぞ! なんとかしてくれい!」といった表情です。そこで私はいつもこう言います。
「Just call me Kats. K-A-T-S. OK?」
ここでクラスに安堵の雰囲気が流れます。「おお、簡単で良かった! なるほど猫ね。でもKで始まるからちょっとエキゾティックだわあ。」といった感じです。でも実際はこの「Kats」ならびに「Kat」という言葉、ストリッパーやAV女優などに多く用いられている名前で、実はそういうものと連想して覚えたのではないかとも推測されます。
まあお蔭様でみんなにも名前をすぐに覚えられ、相手の名前は覚えてないのに「キャーツ」と声をかけられるようになりました。そのうちにテレビやラジオで「cats」という言葉が出てくるだけで反応するようにもなり、メールでは露骨に「Hi Cats!」と間違えるドアホも出てくる始末で(James RoweにMaggie Sun! おまえらのことだ!)、子供には「猫、猫!」とはやしたてられ、馬鹿にされているのか親しんでくれているのか分からないような状態で、色々と悲喜こもごもな有り様でした。
書く方も、オフィシャルな場合を除いてほとんど「Kats Ishizaki」と書くようになりました。こうしないとみんな分からないからです。次の学期のある授業では、担当教授はクラスの名前をだれ一人として覚えていないのに、なぜか自分の名前だけは覚えてくれていて、「Kats!!! きみどう思う?」と何度も指名され、非常に困った思いもしました。ただしこの教授の場合、正確に「カツ」と発音してくれていたのでちょっと嬉しかったですが。
でもアメリカ滞在も半年以上過ぎた頃、さすがにこの「キャツ」という発音には、かなりの違和感を感じるようになってきました。そこで一念発起。一部の不器用者、もしくはそんなに頻繁に会わない人間を除いて、「カツ」と発音を訂正するように求めました。まずは当時、アパートをシェアしていたアメリカ人、そしてその彼女、そしてその子供たちから。
「ほんとの発音は、カツなのさ。」
一番最初に発音訂正に成功したのは小学校に通うその子供たちでした。やはり若いことはいいことだ! なんと彼らには日本語で「カツヒロさん」と呼ばせることにも成功し、あまりの嬉しさに彼らを抱きしめてやりました。一方困ったのは大人達の方で、試行錯誤を繰り返し、1ヶ月ぐらいでどうにか発音できるようになりました。でも発音ができるようになった頃にはそのアパートを出て、違うアパートで暮らすようになっていましたが。
しかしながら他の人間はやっぱり駄目で、結局「キャツ」に戻っていきました。新しく出会った友達などにも「カツ」と発音するように求めましたが、やはり「キャツ」のほうが発音心地がいいようで、結局私の名前は「キャツ・イシザキ」ということになってしまいました。
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そしてその頃からこの日本語でのホームページを立ち上げ、その最初のタイトルが「Kats's Concert Review From Texas」。「Kats」という名前はこのホームページを訪れてくれる人にまで浸透し、自分を表す記号として頻繁に用いられるようになりました。
気が付いてみると日本に戻ってきてからも、本来はアメリカでのみ使う予定であったこの名前を、自己紹介で用いるようになっていました。「どうもこんにちははじめまして、カツです。」。正直言って居心地はあまりよくありません。でもメッセージの中で「Katsさん」と言ってくれている人に、「いしざきさん」と言われるともっと居心地が悪いのです。また呼ぶ方も「いしざきさん」と呼ぶのに居心地の悪さを感じることでしょう。ネットを離れるといつもの日本人「いしざき」に戻りますが、ネット上、そしてアメリカでは「Kats」なのです。今ではこの両者も切り離すことができなくなり、混在しているため自分自身戸惑うこともしばしばです。しかしなんとか折り合いをつけてやっていくつもりです。
でもほんとは「かつひろさん」って呼ばれる方が好きなんですよね。もちろん女性にですけど・・・・。
これからもこのHPに来てくださる方は、この不肖「Kats」をよろしくお願いいたします。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 8/ 12/ 98
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