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+++ 全米プロゴルフ選手権と丸山茂樹 +++

79th PGA Championship

- 8/14/97 at Winged Foot Golf Club, Mamaroneck, NY

在米中の97年8月、あこがれの男子プロゴルフのメジャー大会を生で観ることができました。米国北東部を旅行していたときに運良く観られたこの全米プロゴルフ選手権初日。そこでの日本人選手の活躍を中心にプロゴルフ・レポート!!

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ゴルフとロックの知られざる関係

ゴルフとロック・ミュージック。まったく違う世界だが、一応共通点らしき物が無いこともない。

  • その人の感情がプレーに出る。(ゴルフの場合感情というより性格か。これはタモリ、たけし、さんまのビッグスリーゴルフを見ての通り)
  • いいプレーをすれば人気も上がるし、客もたくさん付くし、金も入る。
  • いいプレーには拍手がもらえる。
  • 一つ一つのプレーに正確さが要求される。
  • ツアーに出る。
  • ホール(曲)ごとに違った表情を持っていて、それひとつひとつのプレーの積み重ねでその日の結果が決まる。
  • テレビより生がいい。
  • プレーヤーそれぞれが個性的。
  • 年取ってもやれる。
  • 一度ハマると止められない。
  • クラブでプレーする。
  • 傘でプレーの真似事をする人がいる。
  • 黒人のプレーヤーは比較的少ない。
  • J・マスキス、ヒューイ・ルイス、イギー・ポップ。
  • やっぱ努力より才能。
ざっと考え付くところでそんなところだろうか。そしてもう一つの共通点がこれ。

「アメリカ、イギリスが本場。日本人はなかなか英米では戦えない。」

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イントロと全米プロ観戦への道のり

そんなわけで強引に本題に持っていきたい。紹介するアーティスト、いやゴルファーは、その高く厚い壁を破るところに現在最も近いところにいる男、丸山茂樹だ。以下は彼の活躍が日本でも伝えられたであろう全米プロゴルフ選手権初日の模様である。

全米プロは男子ゴルフ界のいわゆる四大トーナメントの一つで、およそ80年の歴史を持っている。そのゴルフトーナメントをみるために、私は大学の夏休みを利用してはるばるテキサスからここNYまでやってきてしまったのだ。私はプレーの方はまったく興味がないが、テレビ観戦はなぜか好きなのである。何せ高い金払う必要がないし。世界のゴルフ四大トーナメントとなればその興奮も最高潮に高まる。そしてその生での観戦は長年の夢だったといっても過言ではない。

四大トーナメントときてまず思い付くのが4月に行われるマスターズ・トーナメントだ。しかしこのトーナメントのチケット入手は非常に困難で、何年も先までチケットは完売状態だという。それに時期も良くない。6月に行われる全米オープンもその一つだが、夏学期中に抜け出してゴルフ観戦はちときつい。全英オープンは地理的に観戦は不可能。残るは全米プロ選手権。ちょうど3週間の夏休みのちょうど半ばに日程が組まれていてなんとかなりそう。今年はNY Cityの郊外のWinged Foot Golf Club が舞台にあるとあって、ついでに誰かのコンサートもその辺りで観てしまおうというわけで、はるばる馳せ参じたわけである。チケットも8月14日の初日のラウンド分が何とか取れた。しかしチケットの発券場所がなぜかフロリダというのが面白い。

前夜のペンシルベニアでのボブ・ディランのコンサート終了後、徹夜で車を飛ばしての会場入りである。一度道を間違えて、マンハッタンのとてつもなく恐ろしい地域に迷い込んでしまい冷や汗かいたが、どうにか早朝にクラブ指定の駐車場に到着。会場と駐車場を結ぶシャトルバスにもすんなり乗れて、朝もやの中戦場にたどり着く。

まず1番ホールに陣取ると、テレビで見てきたあの人この人が目の前に次々と姿を現しティーオフしていく。ニック・ファルド、フレッド・カプルス、トム・ワトソン、トム・カイト、ペイン・ステュワート、ジョン・デーリー、アーニー・エルス、グレッグ・ノーマン、ジャック・ニクラウス...。名前を挙げだしたらきりがないゴルフ界のビッグネーム達が、その緊張のメジャー初日のラウンドへと向かっていく。もちろん時の人、タイガー・ウッズもその中の一人だ。彼を取り巻くのは、おびただしい数のギャラリーだけでなく、4、5人の屈強なセキュリティ達もいて、常に目を光らせている。そんな鳥かごに入れられたようなウッズの姿は、少し痛々しい気もしたが...。

そして忘れてはならないのはそのビッグネームの中でプレーする日本人選手達である。実は誰が出るのかはこの日の予定表を見るまで知らなかった。ジャンボの姿がなかったのは少し残念であったが、日本からの出場選手は計3人。尾崎直道、金子柱憲、そして丸山茂樹である。

まずアメリカツアーに参戦中の尾崎直道であるが、まだまだアメリカに慣れていないといった感じだ。ティーグラウンド上の彼はまるで突然ウィッキーさん(古い?)に話し掛けられた日本人のようにおどおどしている。笑顔もぎこちない。対照的に金子は結構堂々としている。突然目が合ってしまって恥ずかしかったなんてことも。そして注目はユニークなキャラクターでも有名なゴルフ界の若頭、丸山茂樹である。

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丸山茂樹、奇跡のラウンド

丸山を見たのは5番ホールからだったと思う。その時ギャラリーも20人ぐらいはいた。しかしそのほとんどは、次の組でまわっていたグレッグ・ノーマンを見るために先回りしてきた人達である。全英オープンで10位タイになったとはいえ、一部の日本人を除いて彼の名はまだまだ無名に等しい。余談だが(まあ全部余談といえば余談なのだけれども)日本人選手を追いかけるカメラクルー及び日本人関係者が気に入らなかったことを覚えている。まず服装が汚い。ゴルフ場にボロボロのジーンズと破けたTシャツはないだろう。皆きちんと正装して望む卒業式の撮影に、ジーパン、スニーカー姿で壇上を動き回る汚らしいカメラマンと同様の違和感と嫌悪感を覚えた。それから大した仕事もしてなさそうなのに、ロープの内側でギャラリーの視界を遮るように見ている日本人関係者の多いこと。金払って見に来ている客に対して失礼だ。しかしこういうのってテレビの画面からは分かんないもんなあ。

話を丸山茂樹に戻すと、彼は4番ホールの時点で1アンダーだったと思う。その時トップが3アンダーだったからそんなに悪くない。このコースとてつもなく難しいようで、ラフに入ったらまずダメ、バンカーなんか論外。グリーンはものすごい傾斜に加え、ピンの位置がめちゃくちゃ難しいところに切ってある。バンカーのすぐ後ろ、二段グリーンのすぐ上なんか当たり前。果たしてどうやってピンに寄せるんだろう、と思わせるホールが数多くあった。さすが世界の強者どもが集まるメジャー・トーナメント。テレビで見ていてなんとなく分かったつもりになっていたが、こうして生で見て、そのすさまじいコースセッティングに改めて驚かざるを得なかった。

私の眼前でいきなり丸山はバーディーパットをねじ込んだ。日本人ギャラリーから「いいぞ、頑張れ丸山」の声が飛ぶ。丸山うなずく。次のホールはボギーとしたが、いつもの丸山らしく舌を出してキャディーと苦笑いをしている。丸山、そしてこの若いキャディーともども英語は苦手なようで、他の選手、キャディーとは「OK,OK」だけで会話している。それでもちっとも卑屈になっているように見えないのには非常に感動した。英語なんてどうでもいいんだよ、と言っているようで、未だ英語に悩む私に勇気を与えてくれたようだった。

ところでこの日丸山は2つのことで有名になっている。ひとつは好スコアによるもの、そしてもうひとつはテレビでも放送されたかもしれないが、それは9番ホールで起きた出来事によるものであった。

やや打ち下ろしのこのホール。丸山のティーショットは左の林の方へ。しかし運良くボールはフェアウェイに出てきた。しかしどうも様子がおかしい。誰かがフェアウェイに出て来て手を振っている。駆け出す丸山とキャディー。たまたま左側で観ていた私もボールの飛んだ方向へ向かう。

そこにいたのは血まみれになった初老の紳士と、慌てて応急処置を施すセキュリティの人達であった。どうやら丸山のティーショットがこの男性の頭を直撃したらしい。意識もはっきりしていない。緊張が走る中で、丸山をリラックスさせようとしたのか日本人通訳がゴルフの話題を丸山にふる。すると丸山は「それどころじゃないって」といって唇をかみ締めた。動揺は隠せない。コミュニケーションが難しい海外ツアーでのアクシデントだからなおさらである。次の瞬間丸山と目が合ってしまい、そのおろおろした目を見てこっちも動揺したけれども。

幸い意識は回復し、担架で運ばれていくその男性。かなり長いインターバルを置いてプレー再開だ。正直これで丸山はだめだと思った。精神的ダメージでこの先崩れるのは目に見えていた。これからセカンドショットをしようとする丸山の表情はどこか放心状態といった感じ。もう違う組を観ようかとさえ思った。

しかしやっぱりそこは今までの選手とは一味二味も違う丸山である。このホールでも難しいパットを決めパーで乗り切った。もしこれが尾崎将司だったらこのホール、ダブルボギーだったであろう。そしてラウンドのあと「言い訳はしたくないんだけど...」といって言い訳したであろう。この切り替えの速さ、これが丸山の持ち味でもあり、強みでもある。

このあと11番、12番で連続バーディーをもぎ取り3アンダーとして、トップでホールアウトしたジョン・デーリーに1打差の2位に浮上する。ギャラリーも徐々に増え始めた。みな異口同音にこう口走る。「あれがボールを頭にぶつけた日本人プレーヤーだ」。

丸山の顔は興奮で明らかに紅潮してきている。高まるアドレナリン濃度のせいか、同じ組の中でドライバーの飛距離は明らかに他の選手を圧倒している。その新人日本人選手を一目見ようと、ギャラリーがグリーン周辺に集まってくる。そこで丸山は難しいラインを読み切って、難しい長いパーパットを見事カップに沈めた。その瞬間となりにいた男性が叫んだ。「This guy is real! (この男本物だ!)」。

ギャラリーの「Good save」の声に手を挙げて答える丸山。もうここまで来たらどうしてもトップでフィニッシュしてほしい、それだけである。たまたま観に来た試合で日本人選手がトップに立ったりしたら、それこそ文句なく嬉しい。しかしあと1打というところで丸山は短いバーディーパットをはずしてしまう。最終ホールもボギー。結局2アンダーでのフィニッシュだ。しかし18番グリーンに上がって来た丸山の姿は凛々しかったなあ。

無名の日本人ゴルファーが世界の頂点に立とうかというその激動の過程を、少しでも垣間見たようでものすごく興奮した。生だからなおさらである。しかし何が最も興奮させられたかというと、丸山茂樹が私とほぼ同世代の人間だということである。まるで友達か誰かが世界の頂点に立たたんとしているかのような錯覚さえも覚えるのだ。ロックの世界も考えてみてほしい。現在活躍中の私の好きなアーティストというのは、世代的にも共通したものを持っている。Beck, Kula Shaker, The Seahorses, Supergrass, Oasisなどなど、私を含め恐らく似たような時代に育ち、似たような音楽を聴き、似たような批判を大人から受けてきた世代の人間達だ。彼らの音楽が私の嗜好に非常に会うというのも、納得できる気がするのである。丸山と彼らが同年代というのも私には偶然であるとは思えない。興奮と共感が必然として成り立つ、そんな同世代の人間達なのである。

その後丸山は2日目もトップグループの位置をキープしたが、3、4日目と崩れ、最終的に23位で全日程を終了した。疲れて後半はへろへろだったと聞く。無理もない。アクシデントもあったし、初日からあのアドレナリン分泌度では、到底4日間もちそうになかった。だから初日の彼を観られたことは私にとってなおさら幸運なことであった。

日本人の欧米進出はロックが先か、ゴルフが先か。答えはこの日でたようなものである。丸山茂樹の今後の検討を祈る。


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Last updated: 8/ 31/ 97